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その日はいつもより肌寒く、人々は薄着に変えたばかりの着物に後悔しつつ、町を行き交う。
ようやく桜も咲き始め、薄紅に染まった木々の間をせわしなく行き交う中に、剣心の姿があった。
「もうこんな時間でござるか……急がねばいかんでござるな。夕飯に間に合わねば叱られるでござる」
剣心は薫に頼まれていた買い物を済ませ帰り道を急いでいた。顔を上げると既に日が傾きはじめてきている。
剣心の顔は赤く、しかしそれは夕日に照らされたせいではなかった。
朝から顔が火照るのを感じていた為でもあり、
「熱でもあるのでござろうか…後で玄斎先生にでも診てもらおうか」
そう思いながらの帰り道。頼まれた米と味噌がヤケに重い。いつもと変わらない量なのに。風邪を引いて体力が落ちた所為と、一度横道に外れて荷物を置き腰を下ろす。
一息つき、あと少しだと立ち上がった瞬間…突然目の前が真っ暗になってしまった。
あっ、と声を上げるとそのまま倒れてしまったのである。
ざわめく人の声を聞きながら剣心は気を失ってしまった。
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