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剣心が目を覚ました時は神谷家にある自室であった。辺りは薄暗く蝋觸の灯りが揺れている。横に玄斎と恵の姿。
「おや、目が覚めたかね」
玄斎が声を掛けた。
自分の置かれた状況が把握出来ていないとみえて、剣心は呆然としている。
「剣さん!良かった。二日も眠っていたのよ。皆が心配してるわ。呼んでこようね」
恵は安堵の表情をみせた。
そしてドタバタと駆け込んできたのは薫だった。
「剣心!大丈夫?」
あまり寝ていないのか目の下にクマを作った薫は剣心の横に座り込む。
「――拙者……どうして……薫殿?」
剣心が細い声で辺りを見回した。
「どうもこうも無いわ。買い物の帰りに倒れたのよ。覚えて無いの?」
恵が溜め息混じりに説明をしてくれた。
「ウチの患者さんがね、偶然貴方に会って、声をかけようかと思った瞬間に倒れたって。で、すぐウチまで連絡をくれて――」
「たまたま診療所に居た俺がここまで運んだって訳」
いつの間にか左之助が話に割り込む。
「ったく、んな細っこい身体のクセに無茶するからだよ」
「まぁ取り敢えず薬を出しておくよ。多分疲れと風邪からきただけじゃろうて。今は休んで栄養を付けることじゃ」
玄斎は鞄から薬草を取り出し薫に渡す。
「これを煎じてあげなさい」
「判りました。有難うございます」
剣心は体を起こそうかと思ったが恵にとめられた。
「いいから今日は寝ていなさい。薫ちゃんの看病が嫌なら私がいるわ」
「どういう意味よ!」
薫が恵を睨みつける。
「別にぃ?剣さんの事を思ってるだけよ。ねぇ」
「充分間に合ってます」
「煎じ薬は難しいわよ?」
「大丈夫よ!」
相変わらずの二人の間に左之助が入る。
「はいはい。病人の前で暴れるなよ!なぁ剣心?」
剣心はただ苦笑いしか出来なかった。
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