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すると障子の向こうで物音がしたのに気付き開けると、左之助が立っていた。
「――嬢ちゃん。今の話はホントかよ!剣心、長くないって!!」
左之助は拳を震わせる。その顔は青ざめていた。
「左之……。聞いて……。ええ本当よ。後で伝えようと思ってたのよ」
「そ、そんなバカな――信じら……」
左之助は髪の毛をむしるように頭を両手で覆う。
「お願い。弥彦と燕ちゃんには黙ってて。あの子たちには酷すぎる話だわ。……ちゃんと判ってから話すから」
薫は今にも泣きそうに声が震えていた。
左之助も立ち尽くしたまま。唇が何かを言おうと動くが、そこから音は出なかった。
「おーい、薫?此処にいたのか。剣心のとこどうすんだ?……道場の掃除しないと」
弥彦が姿を現した。
思わずビクッと薫は反応するが幸い弥彦に気付かれる事は無かった。
「ん?何、突っ立ってんだよ」
弥彦は左之助の背中をドンと叩く。が、左之助は、
「ああ…すまん」
と、かわしただけであった。
「ちょっと出掛けてくるわ……飯は要らねぇからな」
そう言い残し神谷家を出ていってしまう。こんな時に、と怒るのは弥彦だけ。
薫は見送る事すらせず、昼御飯の準備にと台所に向かった。妙も後を追い手伝うことにする。
「…薫さん…」
暫くして燕も台所に来た。弥彦は道場に向かったので、こちらに来たという。
「あの…剣心さんに付いてあげて下さい。ここは二人で居ますから…」
燕はスッと薫の袖を引っ張り、促した。
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