《第二章 ~euenemia》

2/9
100人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 薫は剣心の部屋の前で止まる。なかなかその障子を開けようとはしなかった。  その時、 「ちょっと邪魔よ!つかえてるから早くしてくれる?」  恵が大きな鞄を持ち後ろに立っていた。 「め、恵さん?いつの間に」 「玄関で呼んでも返事ないから、道場から弥彦くんに入れてもらったわ」  少し機嫌悪そうに薫を睨む。そして剣心を起こさないように静かに戸を開けた。 「まだ眠っているみたいね。着替えさせるからお湯汲んできて」  恵は薫に指示を出すと、剣心の着ている寝間着を脱がせる。それでも剣心は眠ったまま。  細い体に残る幾筋もの傷跡。その一つに触れる。  医者として見ても、生きているのが奇跡ともいえる強靭な剣心の体。だがそれは既に限界を越えていた。  なのに今回倒れたと報告が来た時に、正直信じることは出来なかった。玄斎からの言葉すら嘘にしか聞こえない。  薫が桶一杯に湯を汲んで来た。  そっと剣心の体を拭き、新しい寝間着を着せる。と、剣心が目を覚ました。 「……薫殿?恵殿?――拙者は……」 「剣心?ごめんね。起こしちゃったかしら」  薫は顔を覗き込む。 「剣さん、具合はどう?まだ頭痛いかしら?食欲は?」  恵は鞄から薬を出し、剣心の体を起こす。 「さぁ、コレ飲んでね。少しでも何か食べないと……」 「すまないでござる」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!