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薫は剣心の部屋の前で止まる。なかなかその障子を開けようとはしなかった。
その時、
「ちょっと邪魔よ!つかえてるから早くしてくれる?」
恵が大きな鞄を持ち後ろに立っていた。
「め、恵さん?いつの間に」
「玄関で呼んでも返事ないから、道場から弥彦くんに入れてもらったわ」
少し機嫌悪そうに薫を睨む。そして剣心を起こさないように静かに戸を開けた。
「まだ眠っているみたいね。着替えさせるからお湯汲んできて」
恵は薫に指示を出すと、剣心の着ている寝間着を脱がせる。それでも剣心は眠ったまま。
細い体に残る幾筋もの傷跡。その一つに触れる。
医者として見ても、生きているのが奇跡ともいえる強靭な剣心の体。だがそれは既に限界を越えていた。
なのに今回倒れたと報告が来た時に、正直信じることは出来なかった。玄斎からの言葉すら嘘にしか聞こえない。
薫が桶一杯に湯を汲んで来た。
そっと剣心の体を拭き、新しい寝間着を着せる。と、剣心が目を覚ました。
「……薫殿?恵殿?――拙者は……」
「剣心?ごめんね。起こしちゃったかしら」
薫は顔を覗き込む。
「剣さん、具合はどう?まだ頭痛いかしら?食欲は?」
恵は鞄から薬を出し、剣心の体を起こす。
「さぁ、コレ飲んでね。少しでも何か食べないと……」
「すまないでござる」
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