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身を包んだ、上等の黒隊服はすぐさま雨を吸い込む。
だから、隊服は水を含んでずぶ濡れ。
それに重いとまできている。
栗色の綺麗でサラサラな髪もこの雨のせいで、ぺしゃんこになっている。
しかし、そんな事は気にせずに必死に足を動かして前へと進ませる。
体が重い。
しかし、気にしない。
体が重いのは、隊服が含んだ水のせいではないとわかっていたからだ。
ふらふらと覚束ない足取り。
懸命に進ませる。
行く先はないが。
暫く歩いたが、急にピタリと歩みを止めた。
そして雫が降ってくる空を見上げた。
雫は地へと叩きつけられるように何万、何千と落ちてくる。
その中には彼の頬へと落ちてくるものも当然あった。
冷たい。
ポタリと頬に当たった雫はそう感じるとすぐに、雫は頬を伝う。
筋を垂らしながら落ちていくその様は、まるで涙のようだ。
自分の涙ではない雫が頬を伝いながらも、彼は呆然としながら空を見上げていた。
その瞳は、まるでこの空のように濁り曇っている。
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