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十年前。
街から少し離れた森に向けて、足早に進む人影。
年若くも、腕の立つ符術師。
――何?
ありのままを話せ?
話してるじゃねーか。
俺は当時二十を越していて、符術の腕だって評判に上るくらいには……まあ、それなりだったぞ。
まあ、それで森に向かってたのは……ああ、大惨劇が起こるまでの妖魔の出現地点は固定化されてたからな。
森の奥深く、洞窟の深部といった具合に、とにかく闇が濃いとこにしか出なかったもんな……懐かしいぜ。
年寄りじみた発言だと?
……あんた、容赦ねぇな。
で、だ。
俺は森へ向かう道を歩いてた。
妖魔封じの依頼を請けてな。
多少足早だったが、普通に歩いてた。
油断とか言うなよ。
まさか道のど真ん中で、妖魔と御対面なんて……
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