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「櫂、今日は家に泊まっていくんでしょう?」
「そうだ!!久しぶりに会ったんだからそうしなさい。」
二人にそう言われ、結局今日は実家に泊まることにした。正直、今は一人にはなりたくなかった櫂にはありがたい言葉だった。
久々に三人で食卓を囲み最近の出来事や生活について話をし、その度に二人に
「なら家にもどってきたらいいのに…」
などの小言を聞きながら楽しい時間を過ごした。時刻はとっくに0時を回っていた。
「あら、もうこんな時間!あなた明日も早いんですから今日はもうこのへんで…」
「まだいいじゃないか。なぁ櫂!」
自分に助けを求めてくる義父に笑みがこぼれた。しぶしぶながら寝室に向かう義父を見送り自分も自室へ向かった。
一人になると会場で会った男のことが気になって眠れない。宗家さんなら何者なのか知っているかもしれないと思い、電話してみることにした。
…プルル~
「おぉ櫂か!どうした?」
「遅くにごめんなさい、少し聞きたい事があるんだ………」
「会場にいた若い男?…あ~イズミのことかな!?」
「イズミ?」
「そうだ。イズミ リュウジ。最近出てきた建築デザイナーだ。いいセンスしてるぞ~!イズミがどうかしたのか?」
「ううん!ありがとう、じゃあ」
「イズミ リュウジ」…電話を切ったあとその名前を口に出してみる。
櫂には今まで誰にも言ったことがない思いがあった。実父は何故自分を手放したのか…、自分が嫌いだったのだろうか…。
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