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「『いぬがみぎょうぶ』?この人……人でいいのかな?とにかく、コレ、狸じゃん。犬じゃないよ?」
『隠れる神で隠神(いぬがみ)やで、主。おらんっちゅう意味で『いぬ』って使うてる訳や。刑部は松山のお殿様からもろうた名前やで。八百八(はっぴゃくや)狸っちゅう呼び方もあるんや』
『松山で分かったかと思うけど、この隠神刑部は四国の狸の長なの。松山のお家争いで、謀反人とされた人について、人間に悪さをしてたんだけど、結局は退治されて祠に閉じ込められたはずだけど……』
『儂(わし)は……』
サラスヴァティの話を遮るように隠神刑部がポツリポツリと昔話を始めた。
『儂は、松山のお家を守りたかっただけじゃ……だが、閉じ込められた祠を飛び出してみたらどうじゃ、町はすっかり姿を変え、儂の子孫はすっかり神通力を失ってしまった』
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