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『儂は……』
隠神刑部が続ける。
誰も口を挟むことは出来なかった。
『儂は新たな地で密かに力を貯え、松山の再興を願って……人を集めておったのじゃ。全ては……お家のためだった』
「そうか……だから、鎧武者の亡霊を集めていたんだな。再び、城を……一族をつくるために」
天田が確認すると、隠神刑部はただ力なくコクリと頷いた。
「大変だったんだね……ボク、何か……感動しちゃったよ」
神野は鼻をすする。
目にはうっすら涙が浮かんでいた。
『じゃが……コレで儂の望みも消えた。時代が変わったのだな。お前達なら……きっと、素晴らしい世界を作っていける……そう信じておるぞ』
「一体何を言って……」
相模の言葉を無視して隠神刑部はあぐらをかき、懐から短刀を取り出す。
短刀を鞘から抜くと、その切っ先の輝きを隠神刑部はじっと見つめた。
甲冑の留め金を外すと甲冑が音を立てて地面に落ちた。
「だ、駄目だよっ!」
神野が地面を蹴り隠神刑部に駆け出す。
隠神刑部が自らの突き出た腹に短刀を当てる。
「朱雀!」
『分かっとるがな!』
朱雀が隠神刑部の右腕にしがみつく。
だが、翼ではその抑止力には不十分である。
「駄目だよぉ!何があったって死んじゃ駄目ぇ!」
神野が隠神刑部に追い付く。
隠神刑部のお腹に抱きつく形でしがみついた。
『は、離せぇ!儂は……儂は……!』
「ヴィシュヌ!あの短刀を叩き落とせっ!」
『承知した!』
ヴィシュヌが円盤状のチャクラを投げる。
チャクラが短刀の刃に当たり、隠神刑部の手から短刀を弾き飛ばした。
後方にカラカラと音を立てて短刀が転がった。
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