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『あっ……今日は』
有貴が腕時計を見ると、あと1分程で12時になろうとしていた。
時計の針が12を指すと…有貴は手を合わせ目を閉じた。
『土方さん…ご冥福お祈り致します。』
そう。有貴は土方の命日、5月11日ピッタリに土方の墓参りをするために、わざといつもより遅い時間に一本木閑門へとやってきたのだった。
有貴はゆっくりと目を開ける。
『土方さんは…
死んでからもたくさんの人々に愛されている。幸せ者ね…』
有貴は感慨深い顔をした後に
『でも…一度でいいから一目でいいから土方さんを見てみたいな。まぢ幕末に生まれたかったぁ…』
と悲しげに呟いた。
『そろそろ帰ろうかな…』
有貴が桶を持って立ち上がろうとした時だった。
『お前………
そんなに俺が好きか?』
『え…?』
有貴はゆっくりと後ろに振り返った。
え?まさか?
ここには誰もいなかったハズ…
そしてその洋装。
その整った顔。
『土方………歳三?』
有貴の頭は一瞬思考停止した。
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