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教室のカーテンはすべて開け放たれている。斜めに射し込む光のなかで、詠詩の髪の毛が茶色く透けて見える。ポケットから取り出したハンカチで、詠詩は濡れた指先を丁寧にぬぐいとった。白い指は、男のものとは思えないほど細い。
整った細面の端正といえる顔に、細い銀縁の眼鏡をかけていた。その眼鏡にかかる長めの前髪をかき上げるのが、詠詩の癖になっていた。
うるさそうに髪をかき上げた細い手首には、今日は茶色の皮バンドの腕時計が嵌められている。つい見とれてしまった俺は、ハッとした。
「そーだ。詠詩!早く、宿題を写させてくれよっ」
俺が拝むようにして両手を合わせると、詠詩が俺の机を指さした。
「机のなかに、レポート用紙に写したものが入っているよ。じゃあこれで、僕は日誌を取りにいくから」
「おいっ、それだけなのかよ?待てよ、詠詩!」
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