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俺は机のあいだを通り抜けると、詠詩の前に回り込んだ。背けようとしていた肩を掴むとこちらに向けさせた。
「なに怒ってんだよ。昨日のこと、まだ怒ってんのか?」
詠詩は、顔を背けたまま応えた。
「……拓人って、やさしいから」
「やさしい?俺がか?…それは、おまえのほうだろう。誰にでもやさしくって、面倒見がいいのは、詠詩のほうじゃないか」
「ちがうよ。僕はちがう」
「……?」
「拓人以外の奴なんて、どうだっていいんだ」
「お…おい。どうしたんだよ、詠詩?」
肩を揺すって顔を覗き込むと、詠詩が急に俺の胸に顔を伏せてきた。抱きつかれて、俺は慌ててしまった。
「いやだ…拓人が、僕以外にやさしくするなんて許せない。拓人は僕のものなのに…」
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