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「おっ…!榎本もきてたのかよ?」
俺は横目で詠詩を見た。詠詩は挨拶をすませると、さっさと教室を出て行ってしまった。
それにしても、いつの間にそんな時間になっていたのか。俺は時間が経つのも忘れて詠詩とキスをしていたわけなのか。そのお陰で、俺の下半身は不謹慎にも勃ち上がってしまっていた。
「なんだよ!あとのヤツらは、まだこないのかよぉ~」
ぼやく声をあとにして、俺は教室を出た。そのまま男子トイレに直行した。まだ誰もいないのを確かめて、個室にこもった。朝から学校で抜くなんて、なんとも情けない。これも詠詩が悪い!
キスをしながら背中に絡みつく腕に、クラクラしてしまった。肩甲骨に爪を立てられて、首筋を撫で上げられた。
俺は、それでズキンと痺れてしまった。詠詩の指の感触が、アレを思い出させたからだ。それに「もっと、キスして…」なんて、綺麗な顔で耳元にささやかれてみろ。俺の理性なんて、呆気ないものだ。
SHRが終わると、一時間目から体育の授業が待っていた。まだ半分寝ぼけ気分の身体には辛いものがあるが、ロッカー室で着替えをすませた生徒達が、わらわらと校庭に駆け出した。
整列して準備運動を終え、校庭を三周走ってから、サッカーの練習試合が始まった。二クラス合同の体育の授業は、男子と女子が分かれて受けることになっている。校庭の西側にあるバレーコートでは、女子の練習試合が始まっていた。バレーコートは二面あるが、一組だけが試合をして、あとは応援にまわることになっていた。
俺たち男子も同様で、残りはサッカーの応援にまわった。
そんな授業の中で、詠詩はいつも見学組だった。詠詩は持病があるため、中学時代から運動を禁止されていたからだ。
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