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「わかった。わかったって。なんでも聞いてやるから、話してみろよ。そうだ。その前に、何か飲むか?のど渇いてんだろ」
「タクト~。やーっぱ、おまえっていいヤツだなぁ」
しょうがないだろう。俺と章は、幼稚園からの腐れ縁だ。そう邪険には扱えない。俺が台所に行って顔を出すと、オフクロが夕飯のおかずの天ぷらを揚げていた。
「オフクロ、章がきてるから、夕飯をひとり分追加してくれよ」
言ってから、俺は戸棚の中から菓子鉢を取り出した。
「いいけど。あまり遅くならないうちに帰しなさいよ。章ちゃんのママは心配性だから、うちでご飯食べるって、あんたから電話しときなさい」
うちのオフクロと章の母親も、俺たち同様幼なじみだった。章はひとりっ子で、あんがいといいとこの家のボンボンなのだが、どうしてガサツで図太い。俺は、そんな章の子守役みたいなものなのだ。夕飯を食って章の泣き言を延々聞いてやり、やっと落ち着かせてから、章を家まで送り届けた。
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