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校門をくぐり抜けてから校舎を突っ切って昇降口に駆け込むと、上履きに履き替えて階段を一気に駆け上がった。『2-C』の教室は、東側の校舎のどん詰まりからふたつ目にあった。長い廊下に、俺の足音が響き渡った。ガラッ! 俺は息を切らせてドアを開けた。そこに、黒板の前で振り返った影が、涼しげな声で応えた。
「おはよう」
「駄目だ…はぁ~…息切れた……」
俺は肩で呼吸しながら、襟元のネクタイをゆるめた。
振り返った影は、詠詩だった。詠詩は水を替えたばかりの花瓶を教卓の上に置いたところだった。
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