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   マイグランド領王都にてフレイ・バレストは生まれ育った。  母は貴族で父はデバイス研究者。さらに、妹が一人。  魔法が禁止された王都で、何故か家には魔法に関する書籍がいくつもあった。  後に、母が貴族魔導士と呼ばれる――非公式、非公認、しかし暗黙のうちに許された魔導士だと知ったことでその謎は解けることになる。また、社会の裏側で多方面と繋がりがあることも、成長してから知った。  妹のレイヤは魔法に関心を覚えた。  対してフレイは、魔法よりもデバイスに興味を持つようになる。  それぞれが、母と父の影響を多分に受けて育ったのだ。  もっとも、デバイスはともかく魔法については王都に住んでいる以上は縁のないものだろう――と、フレイは思っていた。  隣国の地方出の学者が魔法の新理論を発表したというニュースも、フレイはあまり興味を抱かなかった。  アクセス中継により、アクセスポイントのない地域でも魔法が使えるようになる――そんな感じの内容だ。  しかし、王都はアクセスポイントの直下である。  百年前にも魔法は使えたし、今だって使おうと思えば使える。それが許されていないだけで。  その程度のニュースなら、AIDネットワークの転送速度が2パーセント上昇したというニュースの方がよほど興味をそそる。  一方、妹はさもありなん、興味津々の様子で記事を読みあさっていた。  いずれ王都から出るつもりなのだろう。魔導学会にでも入るつもりか。  もしくは、魔導士協会か。  スポンサーであるらしい母の口添えがあれば、案外本当に入れるかもしれない。  とある年の初頭、まだ世間には公表されていない新理論に、父が協力するという話が持ち上がった。  理論自体は開発者によって破棄されたのだが、その応用が外部によって開発されたというものだった。  それは、魔導デバイスと呼ばれるデバイスの、理論部だけを人間に組み込み、魔法の効率化をはかるという計画らしい。  テスターには妹のレイヤが抜擢された。フレイは魔法に興味がなかったし、レイヤ自身の意思でもあった。  魔法使いになりたい――それがレイヤの幼少の夢だったから。  だが――結果的にそれは失敗だった。  人間としての機能と人格の一部がデバイスに食いつぶされ、さらにデバイスそのものの特性上、レイヤは自身では二度と魔法が使えなくなったのである。  
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