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生物の腹内のような、どろどろとしたほの暗い空間の中で、男は静かに終わりを求めていた。
その無限のような時間が終わるのを。
その結末が死であったとしても構わない。
ただ終わりがくるのでさえあれば、形は望まない。
そう思っていた。
それが苦痛であることすら忘れてしまうような、そんな絶望的な時間の中で、
色を無くした世界の底で、
ふいに、希望のようなものを見つける。
それに縋り付くように手を伸ばし、そして手に入れたのは『色』だった。
彼の世界に唯一現れた極彩色を、希望だと信じて疑わず、
彼はようやく『終わり』を手に入れたのだった。
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