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幸せな日々
神社の境内に腰をかけてからもうどのくらいたったのだろうか、
辺りはすっかり晴れ渡り、少し蒸し暑くなってきた。
二人はずっと無言なままでいた。
その無言を先に打ち破ったのはお蘭だった。
「申し訳ありません。初めてお会いした方にこんなお願いをしてしまって。」
そのままゆっくり話し続けた。
「先程から黙っていらっしゃるのをみたところ、きっとすごくご迷惑をおかけしてしまったでしょう。申し訳ありません。私はもう大丈夫です。このご恩はかならず致します。本当にありがとうございます。ごめんなさい」
佐吉は慌てた。
ただなにを話してよいのやらわからない、それだけのことで無言になってしまっていただけだからである。
『ち、違うんだ、何を話していいのか。気まずい雰囲気を作ってすまない。そ、そうだな。じゃあお詫びに買い物でもしにいこうか。でも濡れちまった着物は…』
お蘭は嬉しそうに笑った。
「それなら大丈夫です。」といいながら立ち上がり
佐吉の手をひいて駆け出した。
佐吉はなにがなんだかわからなかった。
だが、何があったのか、そんなのを考えることを忘れ、二人は手を繋いで走った。
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