5人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
『おばあちゃん、それなに?』
私の祖母が大事そうに箪笥からなにかを取り出した。
私の身長では、
腰を曲げた祖母にすら勝てない。
だから手にしているものがなんなのか、私にはわからなかった。
ただ、
光に反射しきらきらしていてとても綺麗だった。
あまりの綺麗さに、
私は一生懸命背伸びをして手を伸ばし、
お婆ちゃんから『それ』を奪おうとする。
よくよくみると『それ』の正体は鏡だった。
吸い込まれそうな赤色で、
ガラスの部分は手入れを毎日していたのか、指紋一つないほどキレイだった。「蓮ちゃん、そんな焦らないの。」
おばあちゃんは優しい、温かな笑顔で私に言った。
「大丈夫。
そんなに慌てなくてもこれは逃げたりしないから。
だってこれは蓮ちゃんにあげようと思って出してきたんだからね。」
私はそれを聞いて目を輝かせた。
「ホントに!嘘はだめだよ。」
「本当だよ。
おばあちゃんは嘘はつかないから。
ただ、
約束してくれないとあげられないんだけど、
蓮ちゃんはお約束が守れるかな。」
「もちろんだよ!お約束ってなに?」
「そう。
じゃお約束する前にある物語を話しておこうかね。」
そういいながら祖母は話しをし始めた。
鏡の歴史、
言い伝えを。
最初のコメントを投稿しよう!