第一章 言い伝え

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昔、誰に聞いても “村一番の美人” と讃えられるほどの美しい娘がすんでいた。 もちろん村に住んでる男は皆、彼女に夢中だった。 しかし、ただ一人逆を行く者がいた。 佐吉だ。 佐吉は大工をしている。 女より仕事といった良くいえば真面目、悪くいえば退屈な奴だった。 ある日神社にお参りにいくために、佐吉は朝早くに家をでた。 佐吉は新しい仕事に取り掛かる日の朝一に、神社へお参りに行く習慣があった。 仕事がうまくいくように、怪我をしないように、 お参りに行くのだ。 そういうところから真面目さが伝わってくる。 神社の入口についた佐吉は頬に冷たさを感じた。 『雨か。』 空を見ながらは呟く。 だが佐吉はしっかりと傘を持ってきていた。 家を出たときに、空が怪しいのを気にしたからだ。 佐吉は雨など問題にすることもなく、神社の境内へと足を進めた。 少し行ったところで佐吉は足を止めた。
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