空腹の中で

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「はぁっはぁっ!…ッ!!」 年の頃15、6といった少年は両手いっぱいに饅頭を抱え、息も絶え絶えに走っていた。 「待ちやがれー!糞ガキが~っ!!!」 後ろには大声で叫びながら少年を追いかける饅頭屋の親父、顔を真っ赤にし怒りを露にしている。 しかし少年の足はとても速く、みるみる内に饅頭屋の親父を置いていった。 少年は饅頭屋の親父が完全に視界から消えたのを確認すると大きく深呼吸をし、息を整える。 「へっ!ちょろいな」 盗みの成功を自ら称えるように小さく笑い、ボロボロの着物の袖で額にうっすら浮いた汗を拭いた。 「ただいまー」 少年は町から少し離れ、すぐ目の前に小さな川が流れる、これまたボロい長屋の戸を足で開く。もちろん両手には饅頭をいっぱいに抱えて。 家の中には、5人の子供。 どの子も10歳にも届かない幼子ばかりだ。 子供は戸を開いた人物…、いや正確にはその人物が抱えている饅頭を見て、目を輝かせ言った。 「「おかえりー!!清兄ー!!」
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