2/8
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
モモは雨音で目が覚めた。 しとしとと降る雨は心地良い。モモは雨が好きだった。 でも、今は違う。 モモは大きく、ひとつ、息を吐いた。   -今までのコトが全部夢でありますように   そして初めて、ゆっくりと眼を開いた。 寝ぼけた視界に映ったのは、どこまでも続く瓦礫の平野と、タールのような黒い雨。 モモはしばらくの間、ぼうっとその風景を眺めていた。 (やっぱりダメかぁ…) モモはもう一度息を吐いてのそりと上体を起こした。 真っ黒な厚い雲が光をほとんど遮断し、あたりは真っ暗だ。そのうえ、べたべたする黒い雨が降り注いでいるので一層重々しい雰囲気を醸し出している。 モモは自分が雨宿りしていたその建物に目を移した。 大きな十字架と変わった形の剣を交差させた紋章がいたる所についている。 (…どっかの国の軍部だったのかなぁ??) そう思うとモモは妙におかしくなった。心の中だけでこっそり笑う。 もう一度外を見て、雨が降りやむ気配が無いのを確認してからモモは半壊の軍部施設の中に足を踏み入れて行った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!