●メール

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「私も銅貨も?」 視線だけ送り尋ねると、 そうだよ…と頷いてグラスの 茶色い液体を銅貨が飲み干した。 喉を通るアルコールの焼ける 感覚を想像しながら私は 瞳をとじてみる。 銅貨がウィスキーを 飲むときは寂しい時。 一人でいたくない時。 「何かあった?」 カウンターに肘をつき 尋ねてみる。 さっき銅貨が私に使った 同じ台詞で。 問いには答えず、 銅貨は綺麗な顔をニコリと 笑顔に模る。 「エン、キスして欲しい」 「嫌」 「それは残念」 ちっとも残念そうでない顔で 銅貨が言う。    
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