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その時は玲太の病気のことは知らなくて、ちょうど一年前…死をまぬがれることの出来ない病気があることを本人から聞いた。
玲太が話した理由は、私にとって玲太が負担になるかもしれないから、この事実を知った後、この先も付き合っていくのかを決めてもらうためだ。と玲太は言っていた。
私の答えは、もちろんYESだ。私は最期まで玲太の側にいると約束した。
玲太の病気は治る見込がないため、体の調子がいいときは、側に誰かが居ると言う条件付きで外出が可能だ。
「なぁ…」
しばらくの沈黙の中、玲太が口を開いた。
「なんだか、海に行きたい気分だ…連れていってくれないか?」
海…か。
「もちろんよ。玲太は海が好きだもんね。」
そうして、私達は病院を出て、ここから一番近い海に向かった。
私の車で海に向かっている途中、私は笑い話をして玲太を笑わせたり、最近できた友達の悩みの事について話し合ったりした。
「着いたよ~」
玲太は、ドアを開けて潮風に当たっていた。
「久しぶりに海に来たな。」
「本当だよね。昔は結構来てたんだけどね。」
貝殻の混じる砂浜を歩き、海に足を付けた。
なんだか涙が流れてきそうだ…急に玲太が死ぬのが怖くなって来た。
「なぁ…明日香。俺の願い聞いてくれるかな?」
玲太は俯き、瞳に哀しい色を灯していた。
「明日香には、俺が死んでも笑顔でいてほしいんだ。これからもずっと…。」
ゆっくりと顔を上げ、遠くを見ていた…。
「わかった。すぐに笑顔になる…事は出来ないけど努力するよ。」
「ありがとう…それと」
玲太は私のほうを見て微笑んだ…
「今日の夜に俺は死ぬんだ…。」
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