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俺はここに居た。
遥か昔から存在していたのか、あるいはたった今産まれ落ちたのか。
自分自身納得がいかないが、唐突に自分を認識したのだから他に表現のしようが無い。
そして目の前には一人の老人が立っていた。
深いく刻まれた皺、豊かな白い口髭、白と黒を貴重にした法衣、そして目を引く灰色の
灰色の瞳。正面から俺の瞳を見据えるその瞳は
目線を交わす俺の脳の奥をチラチラと焼くようで
この目はまるで・・・・。
とそこで老人が口を開いた。
「勇者よ、よくぞ参られた」
想像より力強くそれでいて平坦な声。
先程から感じる異質感は老人の無表情、あまりに感情の宿らない双眼によるのかも知れないとぼんやりと考えた。
「残念ながら人違いだ。」
そう答えると老人の顔に僅かに表情が浮かぶ。
「では問おう。お主は
お主は何者だ?」
この老人は何を言っているのだろう。そんな事問われるまでも無く俺は・・・・そこで思考が行き詰まる。
俺は?オレハナニモノダ?
「俺は・・・・俺だ。」
「お主がお主であること
は分かった。しかしお主は自分が何者か認識を持っておらんのだ。ならば勇者で無いと言い切る事も出来まい?」
満足気に頷くと老人は俺を手招きし奥に見える扉へと歩き出した。
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