イヴのディナー

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いらっしゃいませー! ひげをたくわえた男性店員が第一声をあげた。 何名様ですか? 一人です。 ご予約の方は? …いえ…。 それではこちらの方へ。 健志は真っ赤なテーブルクロスの敷かれた席へと案内された。 ななめ前には若いカップルが携帯を見せ合って笑っている。 スパゲティー。 当たり前だがイタリアンである。 X'masイヴの夜にイタリアンレストランで彼女のいない男が一人パスタを食べる…。 …恐ろしい状態である💧 店員がこちらを見ている。 もう出られない。 逃げられない…。 ご注文はいかがなさいますか? カルボナーラとグリーンサラダをお願いします。 さすがにワインなどアルコールは頼めない。 悲しすぎる光景だろ。 いらっしゃいませ! 次々にカップルが入ってくる。 ついには俺の席の隣にも…。 店員の視線 客の視線が痛い…。 X'masイヴの夜に普通イタ飯屋に一人でくるか?笑 私も同感です。 楽しそうな笑い声。 プレゼントを開ける彼女の嬉しそうな顔…顔…顔。 ふっと恐ろしいことが頭をよぎった。 今、この状態で沙織里と彼氏が入ってきたらどうする? …恐ろしい状態である。 空気が凍りつくだろう。 お待たせしました! カルボナーラとグリーンサラダです。 やっぱり一人か…。 みんながそう言っているようだ。 健志は今まで生まれてきた中でこれ程肩身の狭く、そして味のしないパスタを食べたことはなかった。 光の早さのごとく食べ終え健志は表へと出た。
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