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「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………」
首が痛い。
首が熱い。
俺は、目の前の少女に、血を吸われた。少女は俯きフラフラとしている。
「あっ、駄目、来る、来ちゃう!」
彼女は悶え、両腕で自らを抱き締め支えている。
叫ぶ時に開いた口には鋭い犬歯が4本覗いていた。
あぁクソ!痛い!
「あ、あ、あぁあぁぁぁぁあぁ!!」
獣が叫ぶように、大地を揺るがすかのように、彼女は叫んだ。
叫びというか、なにか、変わったというか……。
「………………やっと出られましたわ…」
先ほどの絶叫が嘘のように沈静し、先ほどとは違う口調の彼女がそこにいた。
どことなく抜けている感じがした彼女ではなく、どことなく気品が漂う彼女が今いる。
彼女は月を眺め、すぐに俺の方を見た。
「…………あら?アナタ……あぁ、アナタが私を……。はじめまして。私はアリサ。ラルトゥージュ・アリサ・グラウギル」
彼女は、俺に深く一礼した。
背後に月を構えるその様は、まるで夜に煌めく姫君のようで、綺麗だった。
シチュエーションがこんなんじゃなかったら惚れてるだろう。
「なに言ってるんだよ。だいたいさっき、自分の名前はリリスだって言ったじゃないか」
「ああ、確かに言いましたわね。ですけど、あれは私であって私じゃないですわ」
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