出会いは唐突だ

2/7
前へ
/60ページ
次へ
「さむ…………」 藍色のジーパンに、銀で骸骨がプリントされた白地の長袖。 冷え込む夜には不似合いな恰好で、俺は夜の街を散歩している。 腰に黄と薄茶のチェックの長袖を巻いているが、暑くなったらウザいし巻いたまま。 街は社会人で込み、雑音ばかりが耳に入る。 周りには、さも、当然のように立ち込めるビルにコンビニその他もろもろ。 突然むやみに散歩を始めたのは、血迷ったともとれる。 進路は無し。 そんな嫌な現実は受け止めたくないのが事実だ。 「公園行こっと……」 気分の暗い俺に、賑わう街は害でしかない。 俺は静けさを求めて、近くの公園に足を運んだ。 緑豊かというのだろうか。 少なくとも都会の中では比較的緑が多いだろう。 周りは木だらけだ。 公園は広く、休憩所みたいな場所に、奥に滑り台、そのとなりはブランコ、そのだいぶ後ろに砂場。 しかし、それにしても静かだ。 少しはアホみたいにキスをするバカップルやリストラされたハゲなサラリーマンが居るかと思ったのだが……。 聞こえる音など、夜風の音に、それに揺られる草葉の音のみだ。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

317人が本棚に入れています
本棚に追加