出会いは唐突だ

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『シケテルナァ』 休憩所のベンチに座った時、声とも判断のつかないなにかが脳内で響いた。 「…………なに…?」 ……。 …………。 ………………。 なにもない。気のせい? 「…………末期かな…」 ため息を一つつき、俺は夜空を見上げた。 あぁ、今日は満月だったのか。 なるほど、街灯の少ないこの公園も淡く明るいわけだ。 「どうしたんです?こんな夜更けに空なんか見上げて」 「うぉっ……!?」 スッと少女が夜道を消して視界に入ってきた。 当然だが後退りしてしまう。 夜空を彩るかのような、黒に溶け込む長い髪。 癖っ毛なのか前髪よりちょっと上の一部がふんわりと浮き垂れている。 そして、なにより、ありえない気もする深紅の瞳。 「別に特に理由なんかないけど…?空見るのに理由とかいらない気もするし」 俺は、ベンチの上を空いている左に少し移動して距離をとる。 少女はニンマリと満面の笑みで笑って俺の隣に座った。 「確かにそうですねー。でも、なんかこう、悩んでるみたいな感じだったんでついつい……」 少女は左手を頭に置いて苦笑いをした。 しかしまぁ、可愛い娘だなぁ。 服装は変だけど。
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