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「浮気調査で浮気じゃない?」
「ああ、ある意味浮気よりタチが悪い」
「何なのよ、結局?」
理緒がコロッケを頬張りながら質問してくる。
「頼久が調べてくれるさ」
「今教えてくれてもいいじゃない」
「俺も気になるな。何なんだ、圭?」
仁まで尋ねてくる。
仕方なく圭は今日目撃した事を話した。
寂れたビルの地下に出入りする慎治に、金持ちやヤクザ達。
それに慎治が春からの期間で使い込んだ五百万。
「なるほどな。確かに浮気よりタチが悪いかもしれない」
さすがに仁は予想がついたようだ。
「またあたしだけわからないの? いつもこうじゃない」
「明日になればわかるさ。助手らしく、少しは自分で考えてみろよ」
「圭さんのいじわる。ねえ仁さん、ヒント」
仁が苦笑した。少し考える表情を浮かべた後、仁が口を開く。
「ヒントって言っても難しいな。金持ちにヤクザ、短い期間で使い込んだ五百万。これだけでも充分なヒントだけど」
「頼むよ仁さん。気になって眠れなくなるよ」
「そうだな……」
仁が手を口に当て、ヒントを考え始めた。
「日本ではあまり馴染みのない施設だな。海外では有名な所がある」
「海外で有名?」
「観光地とかでね。更に言うと、本来日本に存在してはいけない」
「存在してはいけない?」
理緒が首を大きく傾げた。頭の上に二つか三つクエスチョンマークが見える。
「違法なんだよ。少なくとも、表立って商売できない。合法な所もあるけど、一番重要な楽しみがなくなる」
圭が言うと、理緒が両手を上げた。
「意味不明。降参」
「まあ理緒ちゃんからすれば、馴染みは薄いだろうな。今度圭が海外に連れて行ってやるといい」
「正解がわかったら連れて行ってやるよ。頑張りたまえ、理緒君」
「もういいわよ。今日はご飯をおいしく食べるわ」
理緒がコロッケを口に運ぶ。圭もソーセージにかじりついた。
結局十時くらいまで、理緒が散々飲み食いした。予想を大きく超える金額を、レジで請求された。
「少しは遠慮しろよ」
店の外に出て、圭は呟いた。
「答えをもったいぶる仕返しよ」
理緒が悪戯っぽく笑う。
部屋に戻り、ソファーに寝転んだ。理緒も帰るのが面倒なようで、シャワーを浴びて、寝室に入っていった。
圭は目を閉じて考えを巡らせた。
今回の話は、真紀子の責任云々ではなく、慎治の問題が大きい。
まずは慎治の目を覚まさせるべきかもしれない。
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