月明かり

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  太陽が傾いた頃に目的地に辿り着いた   もう、港は祭騒ぎで宿は何処も満室だった   街外れの宿に空室を見つけ、再び向かった時には祭もフィナーレに近いのか盛り上がりも倍に膨れ上がっている   視線を巡らせて手紙の内容と一致する場所を探す   (見つけた…祠だっ!)   中心で行う儀式は祠に降り立つ龍王の為に   立入りを禁ずる場所ではないが、逢い引きの場所らしく 恋人達以外の姿はまばらだった   祠の中に入る罰当たりな者も居ない 中へ足を踏み入れて先に進む   (……………!)   祠の中にある湖に一人、だが見知った男の影とは違っていた   「…貴方様は龍神の王ですか?」 『……人間……』 「馨と申します」 『馨…?』 「えぇ…王に、お目通り願いたく存じます」   一拍の間と共に男は姿を変えた 儀式が…終了したのだ   「瑠璃夜様!」 『け…い…?』 「約束を果たしに参りました」   美しく伸びた碧い髪と碧の瞳 鱗の鎧を纏う龍神の王の胸に飛び込んでいた   『馨…馨…』   暖かく美しく妖艷な声が心地よく響く   「会いたかった」   いますぐにでも連れて行って欲しい   けれどソレは束の間で、元の男に戻ってしまった   『…馨…ソレを使える…早く私の元においであまり待てそうにない』   「待って!そっちに俺も…あ…瑠璃夜様!」   呼び止めても、もう王は消えていた   『騒がしいな…人間…いや馨様』 「…貴方様は…?」 『様なんて使わないでくれないか?俺は瑠璃夜様の使いだが…あんた…いや馨様にお使いするよう仰せられた』 「…貴方も普段は使わない敬語はやめて下さい」 『…分かるか?じゃお前も使うなよ?』 「そうするよ…とにかく瑠璃夜様の考えを聞きたい、宿に移動しよう此処は寒い」   まだ名前すら名乗らない男はククッと喉で笑うと後ろを着いてくる
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