終焉の序章

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…この空間にも慣れたな。 冷たい床。色褪せた壁。決して壊す事の出来ない、固く閉ざされた鉄格子… あの後、オレは現れた公僕を三人殺った。我ながら、外す事なくよく殺れたと驚きではある。 オレは右大腿部と左肩に一発ずつ喰らい、そのまま警察病院に搬送、回復後即留置所入りとなった。 …計算通りだった。 廃ビルで十数人殺った事も、しばらくすれば公僕には分かるだろう。それでなくても、国の狗たる公僕を四人も殺ったのだ。…間違いなく、オレは死刑に処されるだろう。 恐怖はない。 どのみちそのまま生活していても死の危険からは避けられないだろうし、何より…… 梓がいないこの世で、生きている事がたまらなく辛い。 ならば死のう。自らの手で死ぬというバカげた事をせず、そして確実にそう仕向けられる方法で。 それが今に至る。 夜も更けゆく留置所の一室、ただ月明かりがオレを照らす。 …何だろうな、月を眺めていたら柄じゃないが願いをかけたくなった。 願わくば…… 再び梓と会い見える(あいまみえる)世界に行ける事を願う…… ―叶えよう― …そんな幻聴が聞こえた気がした。 こんな世迷事に口を挟むなど、バカなヤツもいたもんだ… オレは目を瞑り、とりあえず幻聴らしき声を聞き流しながら意識を手放そうとした。 ―あなたの願い…叶えましょう― またか… オレは目を開け、幻聴のする方へ視線を向けようとした… のに… そこには誰もおらず、尚且つここはつい先程までいた留置所では『まるでなかった』。 淡く輝く果てしない空間… オレはそこに一人で立っていた。 ―新たな世界へと…あなたを導きましょう― そんな幻聴が聞こえたすぐ後、果てしなく思えたその空間の向こうに…一際輝く光の扉が見えた。 ―終わりの時…それが新たな始まりとなる― …オレはその光の扉を 開け放った…
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