新たなる舞台の開演

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…目が覚めると、そこは深く暗い森の中だった。雨降り後なのだろうか、オレの背中は酷く濡れていた。 「気持ちいい目覚めじゃ…ないな…。」 思わず愚痴る。ここがどこなのかという疑問を持つよりも先に。 空気の澄み具合から、今が朝だろう事だけは把握出来る。だが、オレは昨日の夜確かに留置所にいたハズだ。なのに今、何故オレは外にいる? とりあえず状況確認。鬱蒼とした薄暗く湿った森にいる。暗いと言わなかったのは、ちらほらと…本当にちらほらとだが木漏れ日が差し込んでいたからだ。 で、雨降り後だという事。独特な土の匂いがしているから。 …これが一番厄介なんだが… 明らかに殺意を持った『何か』がいる事。一人…ではない。間違いなく複数だ。 昔からそういうモノだけは異常に察知するタイプでな、…ま、大抵は返り討ちにしてやるんだが… …っと、出てきやがっ……た……? …犬?いやいや、大きさからして狼か?にしちゃあ…… 『グルルルル…!』 牙がデカイ。アレだ、サーベルタイガー並みにデカくて鋭い。噛み付かれでもしたら筋肉ごと持ってかれるな… が、恐怖はない。むしろ対峙した事のない『強そうな敵』に出会えて、気分が高まってくるのが分かる。 …これが、巷でオレの事を『白い死神』などと呼ぶ原因かもしれない。 まぁ…大部分は髪が銀色なのに理由があるんだとは思うが。 …だが死神と言うのはあながち間違ってはいないだろうな。何せオレの周りにいた人達は、ことごとく死に追いやられたのだから。 …なんて回想に耽っていると、一匹が業を煮やしたのかオレに飛びかかってきた。何と言うか…その図体の割に身軽だなーなんて思ったりする。
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