新たなる舞台の開演

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それからかれこれ10分後、オレはとりあえず叩きのめしたこのクソ犬どもをどうすべきか悩んでいた。 いくら身軽だろうが、本来の犬みたく集団で知恵を振るいながら向かってこない犬など、街にたむろしているヤンキーよりチョロイ。バリエーションが無ければ左手だけで十分だった。 いなし、叩き付け、腹を殴り飛ばし、鼻っ面に掌底。こんな単調な攻撃でやられるとは、警察犬が徹夜で説教するぞ? などとアホな発言を言わずに考えていると、再び殺気のような気配に気付いた。 …今度は一匹…いや、確実に『一人』だ。ただ、『エモノ』を持っている…。 「ポ~チ~!ど~こ行ったですか~!」 …気の抜けるような間延びした声が聞こえた。この場所にあって、何とも事態を理解させない声にオレはため息をついた。 …が、それが不味かったようだ。その気配が、じわりじわりと近付いてくるのが分かった。 …あら?じわりじわり…じゃない!?メチャクチャ早くなってる!? たった2秒でざっと300mは積めてきてないか!? もはや人間技じゃないな……って、声出してたのは間違いなく人…だよな…。 とか考えてたら既に近距離まで接近してきたのが即座に分かった。 何せ、落ち葉を踏みしめる音が次第に大きく……大きく……っていた!!!? 「ポチ~……ってどちら様ですか~?」 …いやいや、人に名前を尋ねる前はまず自分から、って習わなかっ… 「ああああああああ!!ポチ~!!それにコロ~!!ワン太~!!…で後は知らないけど大丈夫~!?」 …最後のヤツ、安直な名前でご愁傷様。他のヤツ、名前も登場も無くてすまん。というか飼い犬!? ヤバいヤバい…!動物愛護協会からクレームが…! 「…あなたが私のかわゆいポチ達とその他をこんな目に~!?」 …まぁアレが可愛い可愛くないは別として…。オレは素直にその女性らしき人に、力強く頷いてみせた。 『女性らしき』と付けたのは、その人が真っ黒なコートを羽織り、顔がそのフードでまるきり見えないからで。 だが声は間違いなく女性。だから『女性らしき』人とした。 「…アンタ、ソレの飼い主?どういう躾してるんだ?」 「躾~?してませんよ~?」 …あぁ、頭痛い…。
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