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「おい、ほんとにどうした?大丈夫か?」
「ぁ…ああ、大丈夫…」
不思議な感覚の世界に陥っていた俺は曖昧にしか返事を返す事が出来なかった
口は動いているのに頭ん中は真っ白だった――
軽く俯いて極力目線を合わせない様にした
それなのに、さっきの瞳が俺を捕らえているようで…狙われているようで
…少し恐かった
それがいけなかったんだと思う…
アイツが伸ばした手を振り払ってしまったのは―
無意識だった…気が付いたら避ける形をとっていたんだ………
「……あ、…ご、ごめんっ!なんかびっくりしちゃって…」
「…いや、俺も悪い」
「「…………」」
お互いに顔を見る事も出来ずに俯き、罪悪感や不安…そして何故か悲しみでいっぱいだった――
二人共何も言えずに時間だけが過ぎて行った…
「………あ、…ぁあっ!も、もうこんな時間じゃんっ!暗くなって来たみたいだし、か…帰ろうーぜ!」
「…ああ、そうだな。遅くなると心配かけるからな…」
「…そ、そう…そうそうっ!母さんうるさいからなあー」
俺、ちゃんと笑えてんのかな?
アイツの顔見えないけど…
てか、見えない様に前歩いてんだけど…アイツはどんな顔してんのかな?
帰り道は俺の空回りで一方的な会話のお陰でお互い無言になる事はなかった、けど…
俺と、アイツの、間には目には見えないけれど…ぽっかりと大きな、おおきな穴が開いた――
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