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時間は俺の意思に逆らって進み続けた
一週間、二週間と経ち…俺とアイツが一緒にいなくなって一月が経とうとしていた――
夏休みが刻一刻と間近に迫って来た頃、俺はセミの声が煩いぐらいに轟く林の中にいた
青々とした葉が夏の強い日差しを遮り、そよそよとした涼しげな風が吹いている
「さっきまでは暑かったけどやっぱり此処は涼しいなぁ…」
額にじわりと滲んだ汗を手で軽く拭い取った
「ほんと、此処は何年経っても変わらないんだね」
木に凭れ掛かりぽんぽんと手触りを確かめてみる
やっぱり昔と何も変わらない、と嬉しいような悲しいような複雑な顔を浮かべつつ、懐かしむ様に前へ前へと足を進めた…
――此処は俺と、アイツの思い出の場所
何故か此処へ行けば答えが見付かるような気がして…自分の気持ちがわかるような気がして…縋る気持ちもあったと思う、けど……
俺は……………
この場所に引き寄せられたんだ――
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