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「でよぅ一重の小袖が欲しいって言ったのに煉骨の兄貴が勝手に断りいれちまってお預け食らっちまったの」
「留守居じゃ寂しいから鬼ども誘ってみたらあいつら結構うわばみでさ」
「そういう楽しみねぇし、おれたちがいてやらねぇといけねぇのよ」
「……なぁ、どこまでも何もないねぇ…」
「鬼もいねぇし」
「………足いてぇ」
とりとめのない蛇骨のお喋りがとうとう途切れた。
くるっと後ろを振り向いて。
腰に手をあて、噛みついてきた。
「龍羅っちっとも聞いてやしねーだろっ!」
「おめぇら人間が七人いて見世物やってて鬼どもに重宝されてんだろ。よくそれだけ口が動くな、おめぇは」
「聞いてんなら…相槌くらい打てねぇのかよ」
「仕方ねぇだろ。おめぇみてぇに駄喋りの尽きねぇ人間は初めてだし、そもそもおれは人間とまともに話なんざしたこともねぇんだ」
「駄喋り…」
蛇骨がしゃがみ込んだ。
俯く姿が小さく見える。
「煉骨の兄貴も無駄話って言うんだ。おれ、いつも真剣に話してんのに」
「おめぇの話に興味がねぇんだろ。………おい、何座ってんだ」
蛇骨は完全に地べたにへたりこんでいた。
「歩けねぇ」
「あてもねぇくせに歩き回りたがったのはどこのどいつだ」
「足いてぇて言った」
龍羅は見下ろした。
ふて腐れたように見える、ちょっとばかり可愛らしい顔。
眉を八の字に下げて口を尖らせて。
「歩くの飽きちまったのか」
「………うん……龍羅?なんだよ?どぅ…わっ」
「喋ってねぇで休んでろ」
龍羅は蛇骨の隣に座り、不思議そうに見つめる頭を抱き寄せた。
龍羅の肩に柔らかな重みがおずおずとのった。
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