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地に座し、いつもより低い視線から景色を見渡す。
相変わらずどこを向いても荒涼とした光景だ。
視線が低いせいだろうか、広々と開放感を感じた。
もとより、この世界からどこへも行けはしないのだが。
神妙なくらい、静かに肩にもたれていた蛇骨が沈黙を破った。
「龍羅って閻魔王と知り合いだったのかよ?」
「いや」
「親しそうだったけど」
「そう見えるか」
「閻魔王は龍羅のこと悪いようには思ってねぇって見えたぜ」
「ふん…」
「龍羅は違うのかよ?」
「親しみとかそういうのはねぇな。ただ、他の神仏に比べりゃ、まだマシってだけだ」
「マシ?」
「あいつも空界から追われてここの任に就いた神仏だからな…」
蛇骨が頭を肩から離し、龍羅に向き直った。
「追われて……戦?」
「そんなところだ。縄張り争いみてぇなものだな。あいつはそれに敗れて隷属したんだ。…そしておれたちもいずれそうなる」
龍羅は苦い顔をした。
そうだ。
いずれ…。
「傑作なことだ。永い封印から逃れたと思えば、今度は永遠に地獄の任とはな」
蛇骨が腕をきつく握った。
異形の手をさすってくる。
「おれがいる間は退屈させねぇって。な、龍羅」
龍羅は押し黙った。
「おれ、結構長くいると思うしよ。なにしろ、外道だの鬼だのって言われて暴れまくってきたからよ」
そう言って、蛇骨はにかっと悪戯っぽく笑った。
波立ち、荒れる気持ちが凪いでいく。
龍羅はその心地を穏やかに受け入れながら、蛇骨の顔に顔を寄せていった。
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