7.おひいさま

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  蛇骨は気怠げに寝返りをうった。 さらり、とした敷布が気持ち良くて、足先を動かし肌触りを愉しむ。 爪先が隣で横になっている龍羅の脚を小突いた。   「癖の悪い足だな」 「龍羅はお行儀いいのな。おれ一回も蹴られなかった」 蛇骨にそのつもりはなかっただろう。 だがその言葉は、暗に同衾する相手の寝相を知らしめた。 龍羅は思わず顔を背ける。 「なぁ龍羅、」 蛇骨が肩をつついた。 「鱗に触んじゃねぇと何度言わせんだ」 「なんだよ、ちっとくらい。それよりさ…」 言いかけてしのび笑う。 龍羅は顔を背けたまま、再び目を閉じた。 「あっ寝るなよ~龍羅っ龍羅っ」 蛇骨が腕を揺り動かしてなお、龍羅が相手にしないでいると、いきなり腹の上に乗ってきた。 蛇骨から花の香が薫る。 抱いている間、龍羅を酔いしいれさせた薫り。 この薫りを嗅ぐたびに、蛇骨の姿態を、声を思い出すのだろう。   (閻魔王め…) もしかしたらあいつに図られたのかもしれない。 そう思うと腹が煮える。 「なぁ龍羅~」 龍羅は蛇骨の指を手に取った。 「なんだ、さっきから」 指をそっと噛んだ。 「いった…なにすんの…」 「ちょっとは大人しくしな。よくもそれだけ傍若無人になれるもんだ」 「もぅ…あっでもそれそれっ」 「?」 蛇骨が馬乗りになったまま、 「あのさ、地獄に堕ちてちょっとしてから煉骨の兄貴に言われたんだ。おめぇは本当に罰当たりな奴だって」 あはは、と笑った。 「でもよ、だからここにいるんじゃねぇ?おれ、神ともやっちまったしこれ以上何が当たるんだろうな。龍羅、どう思う?」   朗らかに笑う蛇骨に唖然としながら、龍羅は閻魔王が蛇骨の沙汰を決めかねている理由が見えた気がした。
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