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「え~~せっかく出してもらったのに~~」
「だったら全部てめぇが担いで歩きな」
「…龍羅つめてぇ」
蛇骨はぶつぶつ反発しながらも、閻魔王に再び呼びかけ、天幕や調度品をやっとのことで消してもらいにかかった。
蛇骨が閻魔王にせがんだ品はどれも、贅沢だった。
豊かとは言えない蓬莱島の人間どもが到底目にすることはなかっただろう、そんな典雅な誂えだった。
「生前はずいぶん羽振り良く暮らしていたんだな」
「誰が?」
「おめぇに決まってるだろ」
蛇骨は唇に指をあて、うう~…と唸った。
「……うーん…ガキの頃はね。傭兵稼業についてからはじり貧もいいとこだったな~稼いだ分、なんだかんだと入り用で出てっちまって、煉骨の兄貴がよくぼやいてた。食っていっぱいな時もあったな」
龍羅は少なからず驚いた。
蛇骨からは、そんなひもじさは感じない。
惨めな生活の臭いというのはいくら糊塗しようと、どこからか臭うものだ。
蛇骨が話すまで、龍羅は微塵にも感じなかったのだ。
「だから今、地獄に堕ちてる筈なのに、生計(たつき)の心配しなくていいからホッとしちゃってたりするんだよな。閻魔王に言ったら怒られちまったけど」
蛇骨はぺろっと舌を出した。
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