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蛇骨の魂魄を食った感触はなかった。
それなら一体、光の核はどこへ行ったんだ。
龍羅は狼狽して、辺りを、空を懸命に見回したが、荒涼とした原野と赤茶けた空に何も見つけられなかった。
「蛇骨」
「蛇骨」
「蛇骨!!」
「蛇骨……」
四方に向かい、呼びかけた。
だが、魂魄が応える気配すら感じられなかった。
たった今まで、濃密な時間を分かち合っていた存在の喪失。
言い知れぬ暗い寂寥感が胸を襲った。
鬼相手にやり過ごすしかなかった空虚な時を、どれほど蛇骨は埋めていたことか。
ようやくに龍羅は気付いたのだった。
あいつを…
あいつを探さなくては。
おれが食って滅したのでないなら、この地獄のどこかにいるはずだ。
まず頭に浮かんだのは ―閻魔王。
この地の全ての事象を把握し、掌握しうるものは何をさて置き、疑わしい。
(――地獄門へ行くしかない)
苦々しく舌打ちしたい思いを抱え、龍羅は目指す方へ地を蹴り向かった。
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