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『ちょっと待ってな。
おれの相棒取って来るからよ。』
屈託なく人間が言い、ぱたぱたっと駆けていった。
白い天幕の中に入っていく。
あれが人間の根城、芝居小屋か。
ったく、せっかちな奴。
そう急がずとも刀の錆にでもしてやるものを。
龍羅はほくそ笑んだ。
しかし。
すぐ戻るようだったのが、なかなか天幕から出てこない。
いくぶん、天幕に近寄り様子を窺っていると、龍羅の耳にやいのやいのと小競り合う声が聞こえてきた。
「約束しちまったもん、やるんだったらやるんだよ!!」
「何聞き分けねぇこと言ってんだ!!見世物以外で使うなって言われてんだろーが!!」
怒号が轟いた。
「あっ返せよっおれの相棒だぞ!!」
「だったら腕ずくで取ってみな!」
そんなやり取りが続いた揚句、
「大兄貴のばかーーー!!」
一際大声を上げ、奴が飛び出して来た。
勢いあまって、龍羅にぶつかる。
「っ?!」
「どうした」
「っつ~…鼻うったぁ…」
龍羅はよろめく細っこい肩を掴んだ。
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