25人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
「おい、手合わせとやらはしねぇのか」
人間が子供のように口を尖らせた。
瞳が合うと、龍羅は、また何と形容していいか分からない、落ち着かない気分になった。
何故、こんなにざわざわした気持ちが体中を這いずるのか。
「大兄貴が…閻魔王に私闘は禁じられてるからだめだって…見世物以外使っちゃいけねぇって…」
「閻魔王?」
「おれの蛇骨刀…取られちまったんだよぅ~~!!」
少なくとも人間は二人いるらしい。
それに閻魔王は何のつもりか、こいつらに芝居小屋をあてがい、武具の使用まで許しているらしいことが知れた。
(ふぅん。只事じゃねぇな。この人間、他とちっと違うらしい。ますます食ってみてぇ)
だが、凄まじい殺気が自分に向かってくるのを感じた。
目の前のこいつじゃない。その後ろ、天幕から出て来た小童っぱだった。
「新手の鬼か。蛇骨から離れろ」
「何が鬼だ」
この人間の目、これは良い。
龍羅は落ち着かない気持ちがおさまり、狩る時の昂揚感が湧いてくるのを感じ、安堵した。
「蛇骨から離れろっつってんだ、聞こえなかったか」
「大兄貴…。な、あんたちょっと離し…ぅわっ」
龍羅は愛刀のひと振り、風刃牙を奮った。
「ふっ。こいつは頂く。約束も果たされていないからな!」
疾風がごうっ、と砂塵を巻き上げ結界をつくり、視界を奪う。
小童っぱが怒声を上げた。
「!! てめぇっ蛇骨を離せ!!」
竜巻のような砂嵐が止んだ時、龍羅と蛇骨の姿は忽然と消えていた。
最初のコメントを投稿しよう!