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 街外れへとトカゲが駆ける。  リンゼンは魔術保護指定都市であり、更には特級経済区でもある。  けど、その基盤は裏の山から採れるエレメンタルと関連魔術の利益に過ぎないので、中央区以外は結構田舎っぽい。  トカゲをちょっと走らせれば、すぐに山際の自然地区やら農業地区にたどり着く。  中央区の建物がぎっしり詰まった感じも嫌いじゃないし、暮らすには便利だ。  でも、俺にはこの辺みたいに草が生えっぱなしになっている景色の方が馴染む。  小さいころは野山で遊んでばっかりだったからかな。 「しっかし、なんで今頃宝石蜂なんだろうなぁ」 「廃棄処理仕切れなかった一部が逃げて、野生化したって書いてありますけど」  ジンさんの台詞を聞いて再び携帯端末に目を落とす。 『――以来、国内では2、3年に1件ほどの割合で、野生化した宝石蜂の出現が確認されている』 「数年に1匹くらい目撃されてるみたいですよ。たまにニュースでもやってるじゃないっすか」 「野生化ねえ」  ふん、と鼻で笑う。  俺と違って、ジンさんはイマイチ辞典やニュースを信用していないようだった。
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