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「さて、と」
「帰りますか?」
「いや」
ジンさんが伸びをして、虫かごを持ったまま首を回す。
「畑。荒らしたとこ、直してから帰るってもんだろ」
「ああ……そうですね」
「お前が」
「ああ……ええ!?」
「何驚いてんだ。俺は帰るまでずっと魔術を継続してなきゃなんねえだろうが。雑用はお前の仕事だろ」
ごく当たり前のことのようにジンさんは言い放つ。
属性魔力付与は、初歩の初歩、俺でも使えるお手軽な魔術で汎用性も高いんだけど、ひとつ難点があった。
自分の体から離れているものに対してはまったく使えない、という。
左手に虫かごを吊るしたままのジンさんを見て、俺は小さく息をついた。
言われて見れば、その通りなんだけど。なんっか釈然としない。
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