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「もしかして、俺ってそのために連れて来られたんじゃ……」
「お、珍しく頭の回転が速いな、テアル」
にやにやと笑われて、俺はがっくりと肩を落とした。
あんなに怖がっていた宝石蜂は、ジンさんが数回網を振っただけで簡単に捕まるし――同じことやれって言われたら、俺には絶対無理だけど――ほんと、何しに来たんだかって感じだ。
「いいじゃねえか、ほら、とっととやれ。早く帰らねぇと今夜もまた残業だぞ?」
「う、分かりましたよっ! どうせ俺は雑用ですとも!」
不安げな顔をした女性がこちらに恐る恐る近付いてくるのを見て、それから荒れてしまった畑を見て、俺は毒づく。
ジンさんは更に笑う。
まずは成果を報告して安心してもらうために、ついでに鋤でも借りるために。
俺は盛大な溜息を振り払いながら通報者の女性の元へと駆け出すのだった。
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