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「お帰りテアル、なんか疲れた顔してない?」
結局、俺たちが役所に戻ったのは、日が落ちかけた頃だった。
術管の窓口が、まだギリギリ開いているくらい。
慣れない農作業で疲れ切った俺を、久しぶりに顔を合わせるリカさんが優しく出迎えてくれた。
「はい、お茶。飲んで? ジンロもお疲れだったね」
「おう、悪いな」
カップを受け取るジンさんは、まだ宝石蜂の入った虫かごを手にしたままだ。
ということは、あれから魔術を使いっぱなしだということになるんだけど――魔術の継続には精神力だけじゃなく体力だって使うのに、全っ然いつも通りだ。
「あ、ありがとうございま……ぐえほっ!」
「どうしよう、ジンロ。テアルが断末魔あげてるよ」
「大丈夫大丈夫、いつものことだろ」
「うん、そうだけど」
そう言いつつ、リカさんの淡い茶色をした目は心配そうだ。やっぱりリカさんは優しい。
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