149人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「今日は悪かったな、リカルラ」
「大丈夫。久しぶりにこっちの仕事できて楽しかったし。特係も悪くないけど、やっぱ国からの依頼は偉そうな感じがちょっとねえ」
「向こう、平気だったか?」
「うん。ちょこっと残業すれば帰れると思う」
本来ならしなくていい残業だっただろうと思うと、やっぱり申し訳ない。
俺はむせるのを死ぬ気で止めて、頭を下げた。
「リカさん、すみません! なんか迷惑……」
「ううん、テアルはなんにも悪くないでしょ。大丈夫、ちゃんとジンロに貸しにしておくから」
「げ。……ああ、分かった分かった。借りとく」
リカさんが「ん?」と笑顔を向けると、ジンさんも降参だというように両手をあげた。この笑みに勝てる男は役所中探してもいないに違いない。
つられて高く持ち上げられた虫かごに夕陽が差した。深紅のきらめき。自然とそこに視線が吸い寄せられる。
最初のコメントを投稿しよう!