149人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「違う。リカルラは才能があるから仕事が速いんじゃない。それだけ年季を積んでるからだ。お前と同じように、お前以上の期間、下積みをやらされてたってことだよ」
「……えっ?」
「そりゃ、1年も2年も延々とデータ処理やってりゃ、早くもなるって。お前だって、最初ここに来た日と比べりゃ、進歩はしてるさ」
言われて、初めてそのことに思い至った。
そりゃそうだ。
誰だってそうだ。
「見込みのねえ奴に、たとえ雑用だろうと仕事押し付けたりはしない。リカルラが勉強しろって言うのも同じだ」
お前には出来る、と言葉の裏で告げられた。
ジンさんにしたら最大限の賞賛の言葉だ。
何とも言えない気持が、腹の底から湧きあがって来る。恥ずかしさと、いたたまれなさと、強烈な焦り。
俺ってどんだけガキなんだよと思って、少しでも早く駄目な自分を修正したくて、すぐにでも走り出したくなる。
最初のコメントを投稿しよう!