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「俺、帰りますっ。もう終業時間ですよね」
勢い込んで言うと、ジンさんは窓際の定位置に腰をおろして煙草の箱を取り出していた。逆光になって見えづらい表情がちょっとだけ笑った。
「ああ、そうしろ」
見ると、もう日は山際に落ちる寸前だった。
でも、今から帰ってすぐに勉強を始めれば、寝るまでには結構な時間がある。
そうと決めると急にやる気が湧いて来たりするんだから現金なもんだ。
「さぁてっと……ん?」
伸びをして机の上に目を落とすと、さっきリカさんが言っていた営業許可証の関係書類とは別に、意味深に裏返されている紙が。
いやな予感がしてそうっと捲ると――
「げっ!」
びっしりと、本日の苦情が、一覧になって並んでいた。
・急いでいるのに不必要に待たされた
・発行された証明書の名前に誤字があった
・昼休みは終わって営業時間のはずなのに誰もいない
等々……。
「く、クレームだらけだ……」
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